現実味のある希望 ほんとうに可愛い女の子ばっかりですね!とおれが言うと、王子は困ったように笑った。 「どうしようかなあ、迷うなあ、みんなすてきで。最近仲間になったビッキーちゃんは天然で可愛いし、いやでも大人の魅力って奴もなかなか」 「……カイル…」 「ほんと困っちゃいますねー。ちなみに王子は、もう本命の子とかいるんですか?」 「……」 「カイル様…!もうそれくらいにしてください!」 リオンちゃんがおれと王子の間に立って、キッとおれを睨んだ。おお、こわいこわい。けれど怒っているリオンちゃんもなかなか可愛い。 そんなことを思いながら、ごめんねえ、と笑った。 「でもおれ、女の子が怒ってる顔も、可愛いと思うんだよなあ」 「か、か、からかわないでください!」 「いやほんとに。姫様もよく怒ってたけど、かわいかったなあ。アレニア殿にもよく怒られたし」 おれがそういうと、とたんにリオンちゃんも王子も神妙な顔つきになった。おれは構わずに続ける。 「アレニア殿が、じつは素直になれないだけでおれのこと好きとかだったら、もう、たまんないのになあ」 「……カイル様、もう……」 「大丈夫だよ、リオンちゃん」 おれは笑って腕を広げる。よく陛下やフェリド隊長がしていた仕草だ。大丈夫だ、落ち着けカイル。そういってたくましい腕を広げる隊長。よくやりましたね、ありがとう、カイル。そういってやさしく腕を広げる陛下。 今、あの二人の思いを痛いほど感じている。 「また会えるよ、みんな。うまくいくさ」 たとえそれが現実味のない希望でも、それでもいい。未来はどうなるかわからない。 もしかしたらこのおれが、城中の女の子に告白されることだって、あるかもしれないじゃないか! それに比べたら、ねえ王子、よっぽど現実味のある希望でしょうが。 口には出さなかったが、おれはそういう気持ちを込めて腕を広げて見せた。 王子はやはり困ったように首を傾げたが、やがてにこりと笑って、 「ありがとう」 と、言った。 いいえどういたしまして、王子。おれは夢や希望を語るのが大好きなんですよ。 おしまい 2006/02/25 保田ゆきの |
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