戦場はいつだって血なまぐさく、不快で、自分が自分でなくなるような気になる、興奮しているのか、醒めているのか、ふたつがないまぜになった気持ちで、ただ人を斬るか、人に斬られるかの駆け引きだけに集中する。
 異常である。
 もはや人の所業ではない、しかし、動物たちはみな、弱いものは捕食され、より強いものが生き残る、つまり人間も動物の一つならば、戦い殺すことこそが人の正しい姿であるといえるのか。
 いつもならカイルは真っ先にそんな考えを否定する。だが今はしない。なぜならカイルは今、人を傷つけている最中だからである。
 どんな偽善も、やさしいこころも、愛やら何やら温い言葉も、すべて自分が振るう剣の前にかすむ。
 人を傷つけるということは、おそろしいことだ。
 肉を切ることは、血を流すことは、骨を折ることは、おそろしいことなのだ。
 手に持った鋭利な刃物、研ぎ澄ました剣は、人を傷つける以外に何の目的もない凶器である。
 それを振るう自分に愛などない。
 やさしさなどないんだよ。















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