3.攻防

 とっさに、トリスタンさんが前に出た。
 普段はあまり頼りがいがあるとはいえないこの人が、まるで鉄壁の壁のように私の前に立ちふさがる。
 剣同士が激しくぶつかる音がした。
 仲間達はいそいでこちらへ向かってくる。
 しかし敵は四方八方に伏せていたようで、思うように陣形が取れない。
 ふと風の音が聞こえた。
 びゅん、というより、ブン、という音だった。
 矢だ、と気づいたのは、もう数本受けた後だった。
 思わず声を漏らすと、トリスタンさんが蒼白な顔で振りかえった。
 何を心配してるんですか。
 あなただって、怪我だらけじゃないですか。
 今すぐ、応急手当をしますよ。
 そんなことを言おうとしたが、矢傷の痛みがそうさせてくれない。
 トリスタンさんは敵を斬りつけ、また斬りつけられながら、ちらちらとこちらを伺っている。
「せんせい、」
 切羽詰った声が聞こえた瞬間、私のひざは、かくっと折れた。


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