ファズがおれの手をにぎって、そのとたん、体中がしびれた、こんなことは初めてで、おれは、自分に何が起きているのか、よくわからなくて、何か言いたいけれど言葉もでてこない、ただ、おろおろと、どこを見ていいのかわからず、視線を泳がせていた。
 ファズの顔が近づく。反射的に目を閉じて、顔をそらした、するとファズは、おれの首筋に顔を埋めて、唇が、おれの首をかすめた、たったそれだけのことで、おれは、どうかなってしまったんじゃ、というほど、高揚して、耳が痛いほど熱くなり、体中がこわばった。ファズの手を、痛いほど、ぎゅっと握り返す。ファズは笑った、ような気がした、吐息が耳にひびいて、ぞくぞくと背筋をはい上がる感覚に、おれはもう本当にどうしていいのか分からない。
 何をしているんだろう、何をされているんだろう。
 何をしたらいいんだろう。
 おれは混乱した、ファズ、と、名前を呼んでみた。ファズはそれには答えずに、おれの目を見つめ、さらに顔を寄せて、唇を重ねた。おれは目を閉じた、目尻から、つと、涙が頬を伝った。唇が一度はなれて、おれは息をつく。すぐにまた口づけられて、おれが身構える暇もなく、ファズの舌が入ってきた。舌と舌が絡みあい、どうして、とか、もう何も考えられない、ぞくぞくと、はい上がる快感に逆らえない。鼻から抜ける声が、自分でも聞いたことないような、甘ったるい響きをしていて、そんな声を出している自分が信じられず、それが、余計におれを高ぶらせた。
 落ち着かず、腰が、そわそわと動く、ファズはきっと気づいているのに、なにも気づいていないような素振りで、ただおれの舌を吸ったり、歯列の裏を舐めたり、おれを好きなように弄んでいた。
「ん、ん……っ」
 ひときわ高い声を上げて、おれは体中をびくびくと震わせた。ようやくファズが、おれの舌を解放して、荒い息を吐きながら、おれの顔を見つめた。おれは羞恥のあまり、ファズの顔をまともに見れず、けれど、快楽にも勝てず、小さく喘ぎながら、肩で息をした。
「……キスだけで、」
 ファズがそう言って、小さく笑い、おれの肩を抱き、耳元に唇をよせて、その言葉の続きをぼそぼそと呟いた。
 おれはあわてて首を横に振った。よく分からないが、顔から火がでるほど恥ずかしかった。きっと、おれは失敗したのだ、理由は分からないが強くそう思った。
 濡れた下着が気持ち悪い、おれは立ち上がろうとしたが、力が入らず、結局ファズにもたれてしまう。
「なあ、ジグ、おれ、おまえにひどいこと、してしまうかもしれない……」
 そう言うファズの声はいつも以上に優しくて、おれは、なんだかよく分からないが、もう一度口づけをしてほしかった。


おしまい

2010年10月10日 保田のら

キスだけでいっちゃうジグを勢いで書きたかっただけだという…






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