おれが、
 村で、自分ん家で、
 のんびり暮らして、妹に怒られたり、じっちゃんと笑ってたり、
 そんなふうに過ごしてる間、
 おまえは、
 好きな人を人質にとられてさ、自分の中の正義と、そのひと、秤にかけて、
 選べないのに、無理やり選んで、
 ずたずたになりながら、
 ホントは父ちゃんのことも憎みきれないで、
 まだどっかで信じてて、
 おなじくらい、
 ぜんぶ嘘だったらなあって願ってて、
 とにかく大切な人が無事であることだけを目的に、
 吐きそうなくらい最低なことしてさ、
 怨まれて、
 憎まれて、
 それでも、って、歯を食いしばっていたのに、
 おれは少しだって、リオンの力になれなかったなあ……。
 おれ、あのあと、ちょっと考えたんだぜ。おれがルーティの孤児院に行って、声をかけずに帰ろうとしたみたいにさ、リオンも、もしかしたらおれに助けを求めようとして、でもおれのあまりに平和ボケした姿をみて、やめちゃったんじゃないかって……。
 かってな想像だけどな。
 そう思うと、辛いよ。
 心底、後悔で、いっぱいになるよ。
 リオン、なあ、リオン、
 おれはいつだって駆けつけるよ、
 おまえが呼んでくれるなら、
 おれはいつだって行くよ。
 でもまだ、呼んでくれないみたいだから、
 おれ、
 精いっぱい、がんばってるんだ。
 がんばってるんだ……


「……スタン、もういい?」
 ルーティがおれの肩を叩いた。おれは目を開けた。
 まだまだリオンに言いたいことがある。たっくさんあるんだ。
 でもそれは、また次にしよう。
 おれの大切な友達、仲間、人生ではじめて出会った頑固者、ほんとうは初春のようにやさしいひと、
 リオンに黙祷。


おしまい






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